遺産の使い込みが発覚したときの対処方法
被相続人(亡くなった人)が生前、親族(相続人)と同居をしていた時や、介護者による介護を受けていた時や、内縁の妻(夫)と同居をしていた時などに、相続人や介護者、内縁の妻(夫)が被相続人の財産を使い込んでいたという事例があります。
使い込みは、相続されるはずであった相続財産を減少させる行為ですので、相続人らはこれを取り戻したいと考えるでしょう。
そこで、遺産の使い込みが発覚した場合、どのように対処すべきでしょうか。
■ 遺産使い込みの事例
⑴ 預貯金の使い込み
⑵ 被相続人名義の株式取引など
⑶ 介護者による使い込み
■ 遺産の使い込みを取り戻せるか
● 取り戻せるケース
・使い込みの証拠がある時
被相続人の遺産を使い込んでいることが明らかな時は、それを証明できるものを用意する必要があります。例えば、被相続人の預金口座の取引履歴や、株式の取引明細書などです。
使い込みの証明は、弁護士などに依頼をするとスムーズに調べることができます。
● 取り戻せないケース
⑴ 使い込んだ相手方にお金がない時
簡単に説明すれば、ないものを返せと言っても返せないために、取り戻すことができません。
⑵ 時効の成立
後述しますが、使い込みの取り戻しには、不当利得返還請求や損害賠償請求をすることができます。これらの請求をするためには、時効制度が存在しますので、早期に対策を講じる必要があります。
■ 遺産使い込みの対処と取り戻し方法
⑴ 使い込み相手と直接話し合う
まずは、遺産を使い込んだ相手方と話し合うことをお勧めいたします。使い込みを証明できるものがあれば、相手方はこれを否定できません。
返還してもらう額は、相続人の場合、法定相続分(民法900条)にしたがって返還してもらう必要があります。また、介護者、内縁の妻(夫)などの相続人以外が使い込みをした場合は全額を返還することになります。
⑵ 遺産分割調停を行う
民法906条の2第1項では、遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合でも共同相続人全員の同意があれば、処分された財産も遺産の分割時に、遺産として存在するものとみなす規定です。被相続人が死亡してから遺産分割をする場合に、生前に使い込まれた遺産も遺産分割時に存在するものであるとすることができます。
⑶ 訴訟を提起する
最終的に、使い込みを認めず、返還をしない場合は、訴訟を提起することになります。
① 不当利得返還請求(民法703条):
「法律上の原因なく利益を得た」場合に返還してもらう制度です。相続人による使い込みなら法定相続分を超える使い込みは法律上の原因がないと言えます。また、相続人以外の使い込みは全額がこれに該当します。
② 不法行為に基づく損害賠償請求権(民法709条):
遺産の使い込みはそもそも、違法行為に該当します。したがって、民法上の不法行為を構成します。
①と②の注意点は、消滅時効制度があることです。①は、債権の行使することを知ったときから5年、権利行使できるときから10年が消滅時効とされ、②は、損害の発生と加害者を知ったときから3年間とされています。
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