相続人に認知症がいた場合の対処法
相続手続きは、遺産分割協議や各種手続きを経て進められますが、相続人の中に認知症の方がいる場合、話し合いがスムーズに進まないことがあります。
また、認知症の相続人は意思表示が難しいことがあり、そのまま手続きを進めると後々トラブルになる可能性もあります。
そこで、本記事では、相続人に認知症の方がいた場合の遺産分割の進め方や、必要な手続き、注意点について詳しく解説します。
相続人に認知症がいる場合の問題点
認知症の方は、判断能力が低下している状態であり、法的に有効な意思表示が難しいとされることがあります。
そのため、遺産分割協議に参加することができない可能性があり、その結果、以下のような問題が発生することが一般的です。
遺産分割協議が成立しない
相続人に認知症がいる場合の問題点の一つ目が、遺産分割協議が成立しないという点です。
遺産分割協議は相続人全員が合意しなければ成立しません。
したがって、相続人に認知症の方がおり、認知症の方が意思表示できない場合、相続人全員の同意があったことにはならず、協議自体が進まなくなります。
遺産分割協議の無効リスク
相続人に認知症がいる場合の問題点の二つ目が、遺産分割協議が無効となるリスクがある点です。
判断能力がないまま認知症の相続人が署名・押印をした場合、その遺産分割協議は無効とされる可能性があり、一度行った遺産分割協議が功を奏さなくなる可能性があります。
トラブルが長期化する
相続人に認知症がいる場合の問題点の三つ目が、トラブルが長期化するリスクがある点です。
認知症の相続人の権利を守りつつ話し合いを進める必要があるため、他の相続人との意見が対立したり、手続きが長引いたりすることがあります。
また、上記のように、遺産分割協議が成立しないため、相続手続きが長期化し、トラブルも長期化するおそれが高まります。
相続人に認知症がいた場合の対処法
認知症の相続人がいる場合の対処法は以下の通りです。
成年後見制度を利用する
相続人に認知症がいる場合の対処法の一つ目が、成年後見制度を利用することがあげられます。
成年後見制度とは、判断能力が不十分な人(被後見人)の代わりに法律行為を行う後見人を選任し、財産管理や法律手続きをサポートする制度です。
認知症の相続人がいる場合には、この制度を利用して遺産分割協議を進めます。
成年後見制度のうち、法定後見を利用するには、家庭裁判所に申し立てを行い、成年後見人を選任してもらう必要があります。
後見人には、家族や弁護士、司法書士などが選ばれることが一般的で、必ずしも親族が後見人となるわけではないので注意が必要です。
そして、成年後見人は、認知症の相続人の代わりに遺産分割協議に参加し、その利益を守る立場で話し合いに臨みます。
後見人は、認知症の相続人を代理して遺産分割協議に参加するため、後見人が遺産分割協議において同意をすれば、当該相続人の同意を得たこととなり、遺産分割協議がまとまりやすくなります。
一方、法定後見を利用するには、裁判所への申立費用や後見人への報酬が必要であり、追加で費用を負担することとなります。
また、制度の利用には一定の手続きが必要なため、早めの準備が大切です。
法定相続分で相続をする
相続人に認知症がいる場合の対処法の二つ目は、法定相続分に応じて相続することがあげられます。
法定相続分で相続をする場合は、登記等の際に、遺産分割協議書の提出をしなくても済む場合があり、相続人が認知症であっても、遺産分割協議を行う必要がないため、一応相続を行うことができます。
しかし、この場合、不動産などの不可分の相続財産が、共有状態となります。
その場合、認知症の相続人も、当該財産の共有者となるため、当該動産の使用収益をするためには、認知症の相続人の意思表示も必要です。
しかし、認知症の相続人の場合、意思表示ができないため、このような場合にはどちらにせよ後見人が必要となるため、法定相続分で相続をすることが有効な対策となる場面は限定的です。
遺言書を作成する
あらかじめ、認知症の相続人が相続人のなることを知っていた場合には、遺言書を作成するのも有効な対策です。
遺言書がある場合、遺言に従い相続を行うため、相続人同士の遺産分割協議が不要となり、認知症の相続人の同意が不要となるからです。
まとめ
本記事では、相続人に認知症がいる場合の対処法について解説しました。
相続人に認知症の方がいる場合は、当該相続人単独で遺産分割協議において同意をすることができないため、この点をクリアする必要があります。
したがって、認知症の相続人がいるケースでは場面に応じた慎重な対応が求められます。
そこで、相続人に認知症の方がいる場合は、速やかに弁護士に相談することをおすすめします。
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吉岡 正太郎
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