遺産相続に関する時効を手続き内容ごとに解説
遺産相続に関する手続きには8種類の時効があり、その期間にはかなりの幅があります。
このような時効を知らないことで、相続できたはずの財産を失ってしまったり、反対に多額の債務を相続してしまったりする可能性があります。
このような事態に陥ってしまわないためにも、遺産相続手続きに関する各種の時効について、以下見ていきましょう。
●相続税申告の時効
相続により財産を受け取った相続人は、相続税と呼ばれる国税を支払わなければなりません。
そして、相続税の時効は申告期限から5年とされています。
したがって5年が経過すると、万が一相続税に納付漏れがあったり、申告漏れや計算ミスがあったりした場合でも、その分の税金を支払う義務はなくなることになります。
もっとも、税金を払わなければならないことについて悪意であった場合、つまり税金をごまかすなどの不正がある場合には、時効が7年に延長されます。
反対に、相続税を多く支払ってしまった場合、その還付も5年の時効にかかることになりますから、注意が必要です。
●相続放棄の時効
相続放棄とは、すべての財産を放棄することを指します。これによってプラスの財産を相続できなくなる代わりに、債務などマイナスの財産を相続しなくて済むことになるため、被相続人に多額の借金があった際などに用いられます。
そして、相続放棄の時効は相続開始後3か月とされています。
相続放棄の手続きをしないまま放置してしまった場合、単純承認とみなされて相続される予定の財産についてすべて相続されることになります。そのため、被相続人に債務がある可能性がある場合は、早期に財産調査を行い、相続放棄の手続きを検討しておくことが大切です。
この財産調査を期限内に行うことが難しい場合は、期限の伸長を申し込むことで、さらに3か月間、期間を延ばすことができます。
●遺留分侵害額請求の時効
遺留分侵害額請求とは、各相続人に最低限保証された相続財産である遺留分が侵害されている場合に、侵害者を相手にしてその分の額を請求することを指します。
そして、遺留分侵害額請求の時効は相続の開始および遺留分侵害があったことを知った時から1年間とされています。
また、相続開始から10年が経過すると無条件に請求権が消滅してしまいます。
請求権の消滅を防ぐためには、相手方に請求の意思表示を行うことが必要です。遺産が散逸しており請求の相手方の特定が難しい場合には、請求ができそうなすべての相続人に内容証明郵便を出すことで確実に時効を止めることができます。
●遺産分割請求権の時効
遺産分割請求権には、時効がありません。
もっとも、遺産分割を行わないまま放置してしまうと、遺産の処分をできないことや、相続税を多く払うことになってしまうこと等、多様な問題が発生してしまいます。
そのため、遺産分割はできるだけ早めに行うことが大切です。
また、遺産分割に錯誤や詐欺などがあり、これを取り消したいと考えた場合は、取り消しができると知った時から5年間は取り消しの主張をすることができます。
●相続回復請求権の時効
相続回復請求とは、相続人の資格がない者が財産を相続した場合に、その者に対して相続した財産の返還を請求することを指します。
そして、相続回復請求権の時効は、相続人でない者による相続を知った時から5年とされています。また、この相続があった時から20年が経過すると無条件に請求権が消滅してしまいます。
●贈与にかかる贈与税申告の時効
贈与税とは、財産を無償で受け取った場合に支払う義務を負う税金のことを指します。相続との関係においては、生前贈与の形で実質的な相続が行われる場合もあります。
そして、贈与税の時効は原則6年です。
そのため、相続税の場合と同じく、申告漏れや計算ミスがあった場合でも、6年が経過してしまえばその分の税金を支払う義務はなくなることになります。
もっとも、税金をごまかすなどの不正がある場合には、時効が7年に延長される点も相続税と共通しています。
●預金債権の時効
預金債権とは、金融機関に対し寄託された金銭債権のことを指します。
そして、預金債権の時効は5年とされています。
よって銀行に金銭を預けた日から5年が経つと、預金者はお金を引き出すことができなくなります。しかし、実際には銀行が時効を援用することなく払い戻しに応じてくれる場合がほとんどです。
●相続登記の時効
相続登記とは、不動産相続の際に必要となる、相続した不動産を相続人の名義に変更する手続きのことを指します。
現在のところ、相続登記には時効がありません。もっとも、2024年からは相続登記について不動産の取得を知った日から3年以内に行うことが義務付けられるため、注意が必要です。
このように、時効には様々な種類があるため自力では失念してしまう場合も多いと考えられます。そのため、遺産相続に関しては弁護士への相談をお勧めしています。
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- 日本大学法科大学院修了
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