遺留分を侵害した遺言書は無効になる?遺産を取り返したい方は要チェック
遺言書を見てみると、「自分以外の相続人、あるいは第三者へ財産を譲る」と記されており愕然としたといったケースも少なくありません。
遺留分が保障されている方であれば取り返すための請求ができることもありますが、厳密にいうと現物の返還を求められるわけではありませんし、遺言書自体を無効にできるわけでもありません。
遺留分のルールについて確認し、遺言書との関係性などを整理していきましょう。
遺留分を侵害する遺言書でも無効ではない
遺留分を無視した内容の遺言内容が記されていても、遺言書そのものが無効になるわけではありません。
たとえば「全財産を内縁の妻に贈る」「長男にすべて相続させる」といった遺言も、その他一般的な遺言書としての形式要件を満たしていれば遺言としての効力を持つのです。
その上で法律上保障された遺留分という権利を行使し、侵害があるときにはその分の金銭を請求します。つまり「遺言を無効にして遺産の移動をないこととする」のではなく、「遺言は維持したまま、不足分を金銭で取り戻す」という形になります。
遺言書が「無効」になるケース
遺留分の侵害とは別に、遺言書そのものが無効となるケースもあります。
たとえば、①自筆証書遺言で日付や署名・押印が欠けている、②遺言能力のない状態(重度の認知症など)で作成されたことが証明された、③偽造や変造が認められた、などのケースでは遺言書が無効になります。
もし無効が認められると、どの財産を誰に分配していくのか遺産分割協議によって決めていくことになるでしょう。
ただし、遺言書が無効であることを主張するには証拠の準備が必要で、簡単な作業ではありません。
遺留分に関するルールをチェック
遺留分とは、一定の相続人に対して法律が保障する「最低限の取り分」のことで、被相続人(亡くなった方)がどのような遺言を残していても、また生前にどれだけ財産を贈与していても、侵すことができないとされています。
ただし遺留分が認められる相続人は以下の範囲に限られます。
- 配偶者
- 子(養子・認知された子を含む。死亡している場合は代襲相続人)
- 直系尊属(父母・祖父母など)
このように、兄弟姉妹には遺留分がありません。「遺言で自分への相続が排除されていた」という場合でも、兄弟姉妹の立場では遺留分を主張できない点には注意が必要です。
遺留分の大きさは割合で決まる
遺留分として具体的にいくら確保できるのか、これを算出するには「遺留分の割合」を把握しなくてはなりません。
手順としてはまず遺留分の総体的割合を確認し、ここに各自の法定相続分を掛け合わせます。こうすることで各人の遺留分の割合が算出されますので、遺産全体にその割合を乗じて金額を導き出します。
相続人の構成 | 遺留分の総体的割合 |
|---|---|
直系尊属のみが相続人の場合 | 相続財産の3分の1 |
それ以外の場合(配偶者・子など) | 相続財産の2分の1 |
たとえば配偶者と子2人が相続人なら、総体的割合は2分の1。配偶者の法定相続分は2分の1なので、配偶者の遺留分は全体の「4分の1」となります。子2人の法定相続分はそれぞれ4分の1のため、一人あたりの遺留分は「8分の1」です。
もし遺産の総額が8,000万円だとすれば、配偶者には2,000万円、子それぞれは1,000万円が遺留分として保障されることになります。
侵害された遺留分を取り戻すには
遺留分を侵害された相続人は「遺留分侵害額請求権」を行使することで、侵害額に相当する金銭の支払いを求めることができます。
遺留分権利者及びその承継人は、受遺者・・・又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
ここでポイントとなるのは以下の点です。
- 遺留分のうち「侵害された分」が請求可能であり、遺産の一部を取得できたのであればその分は控除する
- 「現物の返還」ではなく、「金銭請求」のみが可能
※相手方との交渉により、任意に基づく返還に応じてもらえる可能性はある。
1,000万円の遺留分が保障される場面で大半を第三者へ遺贈され、200万円しか相続できなかったという場合、請求できるのは1,000万円ではなく800万円です。
また、代々承継されてきた特別な土地が遺贈されたとしてもそれを取り返すことはできません。侵害された遺留分の金額を算定し、その金額についてのみ請求が認められます。
さらに厳密にいえば、特別受益にあたる生前贈与など相続開始前の財産の移転についても考慮しないと正確な金額は算出できません。過去に贈与も行われていたケースだと問題がより複雑になるため、弁護士にご相談いただくことをおすすめします。
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