不動産を生前贈与した方がよいのはどんなケース?メリットや注意点を解説
親から子への資産承継は、相続で引き継ぐのが一般的ですが、状況によっては生前贈与のほうがスムーズに進む場合もあります。ただ、贈与が有利になるケースもあれば相続が有利になるケースもあり、状況により使い分ける必要があります。
特に資産価値の大きな不動産となれば、より慎重に検討を進めなくてはなりません。
不動産の生前贈与とは
生前贈与は「財産を持っている人が、生きているうちに、特定の相手に無償で財産を渡す行為」を指します。
法律上は一般的な贈与契約と変わらず、渡す側と受け取る側、双方の合意によって成立します。
贈与対象が建物や土地など不動産の場合は、贈与契約を締結したうえで、法務局で所有権移転登記を行い名義変更するのが通常です。
相続と大きく異なるのは、「いつ・誰に・どの財産を渡すか」を贈与者自身の意思で決められる点にあります。相続は被相続人の死亡によって発生するため、タイミングや配分を本人がコントロールすることには限界があるのですが、生前贈与だとそれらをコントロールできます。
生前贈与のメリットが大きくなるケース
不動産の生前贈与に関して、相続を待つよりも贈与が有利に働く場面をいくつか紹介します。
相続人間のトラブルを防ぎたい
不動産は現金のように均等に分けることができません。そこで、相続時に「誰がどの不動産を取得するか」で揉めてしまうことも珍しくないのです。
特に相続人の人数が多くなるほど遺産分割協議がまとまらず、不動産が共有状態のまま放置されるリスクも高くなってしまいます。
この点生前贈与で渡しておけば、所有者の判断で特定の人に不動産を渡し、登記まで完了させられますので、相続発生後の争いを未然に防ぎやすくなるでしょう。
認知症リスクに備えたい
贈与は法律行為であるため、贈与者に意思能力があることが前提です。
認知症が進行し意思能力を失った後だと贈与契約そのものが無効になる危険性があります。
一方、判断能力があるうちに贈与を済ませておけば将来の認知症リスクを回避しつつ、本人の希望どおりに不動産を引き継ぐことができます。
なお、軽度の認知症であっても意思能力が認められれば贈与は可能ですが、医師の診断書を取得しておくなど後日争いにならないための証拠確保が重要です。
収益物件の家賃収入を早期に移転したい
賃貸アパートやマンションなど収益物件として所有しているケースで生前贈与によって建物の名義を子どもなどに移すと、贈与後の家賃収入も受贈者へと帰属します。
所有者が高齢で今後の家賃収入を必要としないのであれば、早い段階で次世代に収入源を移すことで、家族全体の資金計画を立てやすくなります。
不動産を渡したい相手が法定相続人でない
相続では、遺言がない限り法定相続人以外の人が不動産を取得することはできません。
遺言書の作成によっても対処可能ですが、より確実に渡しておきたいケースでは生前贈与の方が適しています。たとえば内縁のパートナーや世話になった知人に不動産を渡したい場合、相続による承継はできないため遺言書または生前贈与を検討する必要があるでしょう。
慎重に検討すべきケース
生前贈与にはメリットがあるものの、以下のようなケースでは慎重な判断が必要です。
シチュエーション | 注意すべき理由 |
|---|---|
贈与後の生活資金や介護費用に不安がある | 不動産を手放すと資産が減少し、老後資金が不足するリスクがあるため |
ほかの相続人との関係に配慮が必要 | 特定の相続人への生前贈与は、特別受益として持ち戻しの対象になり得るため |
贈与後に登記を済ませていない | 登記未了のままでは贈与の効力を第三者に主張することが難しくなるため |
不動産に抵当権が設定されている | 金融機関の同意が必要になるなど、手続きが複雑化するため |
特に注意したいのは「特別受益」の問題です。
ほかの相続人から「遺産の先取りだ」などと主張され、遺産分割の際に持ち戻し計算が適用される場合があります。さらに、贈与額が大きいと遺留分の侵害が生じ、遺留分侵害額請求の対象になることもあります。
贈与を実行する前に、ほかの相続人への説明や、持ち戻し免除の意思表示を残しておくなどの対応を検討すべきでしょう。
生前贈与を行うなら意識しておきたいこと
不動産の生前贈与を進めるにあたって、以下の点を押さえておくと良いでしょう。
- 贈与契約書を必ず作成し、双方が署名・押印する
- 贈与後は速やかに所有権移転登記を済ませる
- 税負担(贈与税・不動産取得税・登録免許税など)を事前に把握しておく
- ほかの相続人に対する配慮や説明を怠らない
- 将来の介護費用や生活資金が十分か確認しておく
不動産の生前贈与が大きなメリットをもたらす可能性もありますが、やり方を誤ると家族間のトラブルや想定外の負担につながることもあります。ご自身の状況を踏まえ、専門家とも相談しながら進めることをおすすめします。
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