遺留分・遺留分侵害額請求とは
■ 遺留分とは
被相続人(相続される人)は、生前に死後の自身の財産について誰に、どのように処分するかを自由に遺言で決めることができます。すると、被相続人は法定相続人以外に財産を相続できることになるので、法定相続人は本来得られる相続分を相続できないことになってしまいます。
そこで遺留分制度が存在します。遺留分とは、法律の定めによって相続人が相続できる最低限の割合のことを指します。
■ 遺留分侵害請求権(民法1042条)
改正前の民法では、遺留分減殺請求権として存在していましたが、2019年7月1日に改正された改正民法では、遺留分侵害請求権として名を改めました。
基本的には、遺留分につき、自己の遺留分の範囲までの財産を返還してもらう請求をする点においては改正前と変わっていません。大きな変更点は、金銭のみでの請求が可能になったことと、生前贈与などの特別受益に関する請求範囲が相続開始前10年間に限定されました。
■ 遺留分侵害請求権の割合
遺留分を受け取れる権利者は、兄弟姉妹を除く法定相続人とされています(民法1042条1項)。
⑴ 総体的遺留分
民法1042条1項各号に示されている割合のことを総体的遺留分と言います。1号では、直系尊属のみが相続人である場合に3分の1、2号では、直系尊属以外が相続人である場合に2分の1を総体的遺留分であるとしています。
⑵ 個別的遺留分
次に、相続人1人につき、実際に受け取れる遺留分を確定します。それを個別的遺留分と呼びます。
個別的遺留分の求め方は、総体的遺留分×各相続人の法定相続分(民法900条)です。
● 具体例
例えば、相続人が配偶者と子ども2人である場合に、それぞれの総体的遺留分は、1042条1項2号に該当するため、2分の1となります。
ここから、個別的遺留分を求めると、まず配偶者の個別的遺留分は、2分の1×法定相続分の2分の1で、4分の1が個別的遺留分です。
次に、子ども1人あたりの個別的遺留分を求めます。総体的遺留分は同じく2分の1ですが、法定相続分は、子どもが2人ですので、1人あたり、4分の1が法定相続分になります。したがって、2分の1×4分の1となり、子ども1人あたりの個別的遺留分は8分の1となります。
■ 遺留分を請求された場合
遺留分について権利者から請求をされたときは、以下の対策を講じておくとよいです。
⑴ 相手方の請求額が適正な場合
遺留分の請求をされた際に、適正な遺留分の額でしたら相手方にその額を渡す必要があります。しかし、請求額に間違いがあることもありますので、上記の計算式を覚えておくとよいでしょう。
⑵ 遺留分の基礎財産を評価しておくこと
あらかじめ、不動産や動産などの財産価値の特定が難しいものについては、適正な評価額を知る必要があります。
⑶ 遺留分権利者に寄与分や特別受益があるかを明確にしておくこと
特に特別受益があった場合は、それを差し引いて計算をする必要があるので、これが含まれていないかを確認しましょう。
遺留分制度については、民法が改正されたことによって変化したところもあります。相続において遺留分の問題を抱えている場合は、弁護士にご相談することをお勧めいたします。
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