配偶者居住権とはどんな制度?
配偶者居住権とは、どのような趣旨の制度なのでしょうか。まずはこちらの事例をお読みください。
<事例>
被相続人Aが亡くなり、妻である相続人Xと、その子である相続人Yがいるとします。AとXは夫婦であるため、同居していましたが、子であるYは既に社会人として一人暮らしをしています。そして、Aの遺産は、自宅(2000万円)と預貯金(3000万円)であったとしましょう。
この場合、これらの遺産が相続されるとどのような状況になるのでしょうか。
被相続人の配偶者と子は、常に相続人となり、遺産を相続することができるとされています(子→887条1項、配偶者→890条)。
そして、「相続人となった者が誰か」に応じて遺産をどのような割合で相続するかを定めている民法900条をみると、「子及び配偶者が相続人であるとき」には、子と配偶者がそれぞれ遺産の半分ずつを相続すると規定されています(同条1号)。
これらの規定を頼りに考えてみましょう。
まず、遺産の総額は、
自宅(2000万円)+預貯金(3000万円)=5000万円
となります。
そして、妻Xと子Yの相続分は、それぞれ遺産の半分ずつ相続するとされているため、
妻X→5000×1/2=2500(万円)
子Y→5000×1/2=2500(万円)
となります。
さらに、事例の状況を思いだすと、AとXは同居している夫婦でした。妻Xが自宅を相続できないとすると、住む場所を失ってしまうことになりますから、これを考慮して、「自宅は同居していたXが相続する方がよい」でしょう。
したがって、
妻X→自宅(2000万円)+預貯金(500万円)
子Y→預貯金(2500万円)
というような相続の仕方になるといえるでしょう。
ここで一つ問題が生じるのではないでしょうか。
それは、「妻Xは、住む場所は得られるものの、生活費が不足しそう」という問題です。
このような問題を解決してくれるのが、「配偶者居住権」(1028条以下)という制度です。
例えば、
妻X→配偶者居住権(1000万円)+預貯金(1500万円)
子Y→負担付の所有権(1000万円)+預貯金(1500万円)
というような形で相続されます。
被相続人が亡くなった際に(相続開始の時に)その住居に居住していた場合で、遺産分割協議の結果配偶者居住権を取得することになった場合や配偶者居住権を遺贈された場合には、配偶者居住権を取得することができます(1028条1項)。
また、遺産分割協議が調わない場合でも、裁判所に遺産分割審判の申立てを行うことで、配偶者居住権の取得が認められる場合があります(1029条2号)。
配偶者居住権を取得することができた場合には、その後の法的なトラブルを避けるために、できるだけ早く登記をすることをおすすめいたします。
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